2016年3月、GoogleのAI部門(”Artificial Intelligence”の略で人工知能の意味)が開発した「AlphaGo(アルファ碁)」がプロ棋士に勝ったと話題になりました。
開発したのはAI部門「DeepMind(ディープマインド)」を率いるデミス・ハサビス氏。
当時はこの無名の企業が Google に500億円以上で買収されたことも話題になりました。
AIがプロ棋士に勝つことがどれだけ凄いかというと、1つのゲームが終了するまでのパターン数はチェスの場合で10の120乗通り。将棋の場合で10の220乗通り。
対して、囲碁は10の360乗通りと最も多いと言われています。
「コンピュータが人間の棋士に勝つには10年はかかる」と言われていたのですが、ハサビス氏はこの予想を覆しました。
さて、今回のテーマはハサビス氏のような天才を育てるにはどうしたらよいか?について、次の3つの流れで解説していきます。
「3.親は子供達に何をしたのか?」では、大川 翔くん(14歳で5校の大学に合格した神童)、羽生 結弦さん(フィギュアスケート選手)、宇佐美 貴史さん(プロサッカー選手)の幼少期のお話に触れています。
ちなみに突っ込みどころ満載の内容に仕上がりました(笑)
にもかかわらず、天才の育て方のヒントになれば、と願ってやまないセンチメンタルな今日この頃です。
1.子供は産まれた順番で優劣が決まる?
子供の産まれた順番で成績に優劣がある、ということがアメリカ政府の調査で分かりました。
これは1990〜2008年の19年間、10〜14歳の子どもを持つ母親を対象に調査を行いました。
クラス成績の結果は下表の通り、最も優秀な成績を修めた生徒は長男、または長女の33.8%となりました。
画像引用元:the Atlantic「First Children Are Smarter—but Why?」
第二子、第三子となるにつれて成績が落ちていることも分かります。
今のところ、この結果を裏付ける要因は解明されていません。
ただ、親が第一子の子供には育児・教育など集中して時間をかけることができる、という仮説などがささやかれています。
長男や長女が生まれたら、天才になる可能性が期待できますね(笑)
いずにれしても、第一子に割ける時間が多いのは確かなので、親の意識次第で子供に及ぼす影響力は大きいようにも感じました。
2.天才アスリートには次男・次女が多い?
また、プロで活躍しているスポーツ選手は、次男や次女以降が多く、長男・長女は少ないようです。
これについて、保護者のためのサッカー情報サイト『サカイク』では、興味深い理由を提示しています。
(兄や姉など)身近に具体的な目標がいる。
しかも身体的にも技術的にもアドバンテージを持っている存在を追いかけることは、与えられた以上の課題を克服できる。
柔軟な子どもたちにとっては大きく成長するチャンスです。
サカイク「スーパースターは第二子以降?身近な目標を追いかけ大成する中間子」より
バズケットボール界の伝説、マイケル・ジョーダンにはラリーという兄がいます。
彼が小さい頃、バスケットボールでどうしても兄に勝てなくて「兄のようになりたい」と何度も勝負を挑んだそうです。
プロスポーツ選手に限っては、産まれた順番と生来の「負けず嫌い」にあるかもしれません。
3.親は子供達に何をしたのか?
天才と呼ばれる子供・天才スポーツ選手の親御さんは、いったいどうのように子供を育てたのでしょうか。
ここでは下記3人の天才たちにスポットをあてて解説していきます。
読んでるウチに何か共通点が見えてきます。まずは天才キッズのお話から。
3-1.大川 翔:14歳で5校の大学に合格した天才
大川 翔くんとは現在、カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学に通うまだ17歳の少年です(2016年3月当時)。
翔君は5歳の時、両親の都合でカナダに渡りました。そして、9歳で“ギフテッド(天才児)”という制度に認定されます。
カナダでは“ギフテッド”を政府が認定して、登録する制度があります。
彼は、12歳で飛び級して高校に進学。そして14歳でカナダの名門大学5校に合格しました。
彼の学生生活の内容は自身が運営する『実録!翔の『極楽カナダ生活』』から閲覧できます。
(彼は長男でしょうか?その情報まで調べることができなかったです・・m(_ _)m)
画像引用元:PRESIDENT Online「14歳で名門大学に入学! 天才少年のつくられ方」より
いったい彼のご両親はどのような教育をしたのでしょうか。
英語教育は1歳から始めた
弁護士である栄美子さんは、お客さんの3割程が英語を母国語としたスピーカーであり、当然ビジネスに支障無くコミュニケーションをとっていました。
読み書きも自信はあったものの、ただリスニングだけは非常に苦労したと言います。そんなご自身の体験から息子の翔君には、早い時期に英語に触れさせようと考えていました。
そこで栄美子さんは、翔君の英語のリスニング教育のために1歳頃から次のDVDを流していました。
- MUZZYとともだち
- きかんしゃトーマス(英語版)
「MUZZYとともだち」はイギリスの公共放送局であるBBC(イメージとしてはイギリス版 NHK)が開発した子供向けの英語教材です。
「きかんしゃトーマス」も子供向け番組で、こちらもイギリスで制作された作品です。
当初は人形劇でしたが、2009年以降からCGアニメーションに変更されています。
このご両親の意識の高さが翔君の英語力の土台を作ったのかもしれません。
そして、カナダに行っても英語の吸収力が早かったのでしょう。
脳と五感を鍛える方法
翔君のご両親のユニークな考え方が垣間見れる逸話になりますが「いかに脳と五感を鍛えるか?」を真剣に取り組んだようです。
五感を鍛えるために翔君は、ピアノを3歳から、空手を5歳から始めました。
また、脳を鍛えるためにご両親はよく本の読み聞かせを行いました。
さらに家族で図書館や博物館、動物園や水族館に何度も通ったと語っています。
そして知育教育にプラスになるものは出し惜しみせず、様々な教材を提供しました。
- 2歳半:知能開発教材「すくすくどんどん」
- 3歳〜:公文の国語と算数、七田式のプリント
- 4歳〜:漢詩や論語、百人一首の素読
- 小学1年〜:日能研の「知の翼」
- 小学2年〜:Z会の「受験コース」の受講(本来は小学3年生が対象)
引用元:PRESIDENT Online「14歳で名門大学に入学! 天才少年のつくられ方」より
さらに母・栄美子さんは「夫も私も翔が保育園に通い始めた頃から一生懸命に話しかける」というように、努力を怠りませんでした。
この話しかけるコツとして、保育園の先生が連絡帳に書いてくれたことを元にしゃべりやすく誘導することでした。
例えば「原っぱ公園で転んで怪我(けが)をしました」と連絡帳に書いてあれば、ご両親は「今日は原っぱ公園に行ったの?」と話しかける感じです。
この時のポイントは幼児語ではなく、ちゃんと大人に話しかけるような日本語を使います。
この繰り返しが実を結び、翔君が2歳になる頃には片言ではなく、8〜9語で話せるようになりました。
新しいことを簡単に習得できたわけではなく、積み上げたことの上に次があるという地道な考え方でやってきました。
天才は親の不断の努力から産まれる可能性を示していますね。
3-2.羽生 結弦(ゆずる):フィギュアスケート選手
羽生 結弦選手はフィギュアスケートの選手です。
2014年、ロシア開催のソチ・オリンピックで男子シングルで優勝。日本人初の金メダル獲得という快挙は、誰の記憶にも残っているのではないでしょうか。
さらに2014年世界選手権の優勝、グランプリファイナル(国際スケート連盟が承認するフィギュアスケートの競技会)の3連覇 [2013年-2015年]、全日本選手権の4連覇 [2012年-2015年]と立て続けに前人未踏の記録を叩き出したスーパーアスリートです。
ちなみに彼は長男ですが、年上の姉がいます(笑)
羽生選手の幼少期から指導にあたっていた都築 章一郎さんが、羽生家の教育方針について語っています。
羽生家の場合、あるときは密接で、あるときは突き放すという教育をされていた気がします。
子供にやらせるのではなく、子供が関心を持ったことに可能な限り協力する。子供の『自主性』を尊重するのが、羽生家の教育方針でした
現代ビジネス「天才・羽生結弦を育てた「羽生家の家訓」」より
自主性を重んじる一方で、数学の先生でもある父親は、日頃から「スケートだけではなく、勉強もできるようになる」ことを言って諭していたようです。
そのため、遠征先でも勉強のための教科書、参考書を持ち込み、中学生の頃から成績も良かったと言います。興味深いのは父親と同様に、羽生選手も理数系が得意であるとか。
また、地元の仙台を離れて羽生選手と母の2人でカナダ・トロントに移住した時のことでした。
これは、バンクーバー・オリンピックで金メダルを獲得したキム・ヨナの指導者、ブライアン・オーサーに指示してもらうためでした。
羽生選手は移住直後、生活環境にうまく馴染むことができず苦労しました。
また、彼は食が細いことで、外食すると胃がもたれることもあったと言います。
そんな時、羽生選手の母親が彼の消化に良い食べ物を作り献身的に支えました。
その甲斐あって、カナダの生活に慣れてくるとブライアン・オーサーの指導を受けて、さらに今までにないスピードで上達していきました。
ご両親の意思とサポートのおかげで1人の天才アスリートが誕生したのですね。
3-3.宇佐美 貴史(たかし):プロサッカー選手
宇佐美 貴史さんは、Jリーグで活躍するプロサッカー選手です。
自身が所属するガンバ大阪では、2013年から3年連続でチームの得点王に輝き、2014年には2005年以来9年ぶり2回目のJ1優勝を果たす立役者となりました。
彼は3兄弟の末っ子で2人の兄がいます。
そんな宇佐美選手のご両親は、どのような教育をしていたのでしょうか?
宇佐美家では次のポイントを大事にしてきたと言います。
- 3つのルールを徹底した
- 家庭環境の変更もいとわない
- 家族が同じ方向を向いている
3つのルールの徹底
彼のご両親は次の3つのルールを徹底しました。
- ほめ上手
- 否定語を使わない
- 常に考えさせる
子供は親からほめられると、自己肯定感が湧いてきて自分から上手くなろうとします。
例えば母・美紀さんが宇佐美選手に「見ててね!」と言われた時は、どんなに家事などで忙しくしていてもその手を止めて、「上手だね」と誉めてあげました。
そして「急いで食べるな!」ではなく「ゆっくり食べるんだよ」のように否定後は使わない。
また「なぜこうなったのか?」と常に子供に考えさせるように取り組むことを意識していました。
美紀さんは次のようにアドバイスしています。
最近の親御さんの多くは、自分の子育てが周りにどう評価されているかばかりを気にして、あまりに“世間的に良い子”に育てようとし過ぎです。
主役は子供なのですから、その自主性を忘れてはいけません
Number Web「天才の親には共通の特徴がある!?宇佐美貴史の例にみる、最新子育て論。」より
家庭環境の変更もいとわない
また「家庭環境の変更もいとわない」とは当時、宇佐美家は団地住まいでした。
宇佐美選手が家の中でも毎日のようにボールを蹴るため「これでは近所迷惑になる」と考えたご両親は一軒家の購入を検討したのです。
そうすれば自宅でもいつでもボールが蹴れる環境ができるからです。
家族が同じ方向を向いている
また、家族皆がいつも同じ方向を向いていることも重要と言います。
宇佐美家では常に「サッカー」と「ガンバ大阪」という家族を密にするキーワードがあり、好きなものが同じなので家族同士で話すことも充実したものでした。
この結果、夫婦間の会話も密になり子供の「何か様子が違うぞ」という少しの変化にも敏感になりました。
おかげで子供のケア・しつけの分別を持って対応することができたようです。