お産後、まるで陣痛の時のようにお腹が痛くなって、不安になっていませんか?
それは妊娠前に赤ちゃんを守って膨らんでいた体の一部が、元の大きさに戻ろうとしている時の痛みかもしれません。
ここでは、その痛みの原因・いつまで続くかの時期・回復を促す体操など、分かりやすく解説していきます。
目次:
1.子宮(しきゅう)収縮とは?
本来、「子宮収縮」といえば、子宮(=赤ちゃんを守り育てる臓器)の筋肉が緊張して硬くなる状態を指した医学用語です。
子宮は筋肉で出来ていて、ママがリラックスしていると軟らかく、ゆるんだ状態です。
一方、ママがたくさん行動したり疲労を感じたりすると、これが原因となって子宮の筋肉が緊張して「キュッ」と硬くなります。
この硬くなった状態を一般的には「おなかの張り」と呼びます。
では産後の子宮収縮とは、どのような状態でしょうか?
子宮収縮のメカニズム
出産後、ママの体は妊娠前の状態に戻ろうと激しく働きます。
中でも子宮は、大きく膨らんだ状態から元の大きさに戻っていきます(これを「子宮復古(ふっこ)」と呼ぶ)。
医師の小川 博康先生(小川クリニック院長)の監修記事によりますと、実に妊娠前の子宮の大きさは出産直前になると2000倍から2500倍にまで膨れるといいます。
画像引用元:プレママタウン「妊娠~出産~産後 子宮と膣のダイナミックな変化の巻」より
そして産後、胎盤が取り出されると急激に収縮が始まり、子宮の高さがヘソの下 5〜6 cmまで小さくなります。
その後は少しだけ収縮が落ち着き、産後12時間経つ頃にはヘソの高さにまで子宮は戻されます。
ちなみに、子宮が完全に回復までにかかる期間は一般的に6週間〜8週間です。
10ヶ月もかけて何千倍もふくらんだ子宮が、産後のわずか1ヶ月程で元に戻るという母体の仕組みには、生命の神秘すら感じてしまいます。
次に子宮収縮によって引き起こされる痛みについて解説しましょう。
2.子宮収縮が原因で起こる痛み
「家族の毎日を笑顔に」を掲げる出産育児サイト『mamari(ママリ)』のママライターである ゆーこりん さん。
彼女は実際の自身の体験から子宮復古の痛みについて次のように話しています。
あれ?出産が終わったのにどうして?
まるでお産が終わっていないかのようにギューッと痛みがきました。
<中略>
「伸びきった子宮が戻ろうとする力なので、あったほうが安心」だと後で聞きました。
中には痛みが軽い人もいるそうですが私の場合は結構痛かったな、と今でも覚えています。
mamari「出産後の後陣痛はいつまで続くの?」より
このように産後の子宮収縮に伴う下腹部の痛みを「後陣痛(こうじんつう ※)」と呼びます。
痛みが治まるには個人差があり、産後3日ほどで治まる方が多いようです。
一方、産後1週間ほど続いた方もいます。
ゆーこりん さんの場合、痛みは日に日に和らいで1週間ほど経つと自然と消えていたようです。
ただし、「下腹部が引きつったようになったり、ズキズキした痛みがある」「腟内に圧迫感、充満感がある」のようなケースの場合、子宮に関わる病気の可能性があります。
自分で判断して自然に治まるのを待つのではなく、近くの産院や病院の医師に相談しましょう。
「後陣痛」は「あとじんつう」や「ごじんつう」など、様々な呼び方がありますが、株式会社法研が発行する「六訂版 家庭医学大全科」では、「こうじんつう」と読んでいました。ここでは「こうじんつう」で統一します。
3.子宮の回復を悪露(おろ)でチェックする方法
「悪露」とは出産後、子宮から排出される おりもの の様な物で、妊娠中に赤ちゃんを守ってくれた様々なものの分泌物です。
2014年に10人目を出産した大阪在住のカリスマ助産師、小林 寿子(ひさこ)さんは、悪露の役割について分かりやすく解説しています。
なんと悪露は、産後の疲れたママの身体を細菌感染から守る素晴らしい役割も担っているのです!
産後の子宮内に細菌がいたとしても、損傷面の子宮内膜にはすでに感染予防的なかさぶたが形成されて防壁になっています。
助産院ばぶばぶ「悪露」より
また、悪露は1ヶ月ほどで治まります。
この悪露をチェックすることで、順調に子宮収縮が行われているかを見ることが出来ます。
チェック方法について、株式会社スキルアップさんが運用する出産育児サイト『電子母子手帳 Babys!』で、悪露の変化を取り上げています。
【悪露の変化について】
- 出産直後:
大部分が血液で、鮮やかな赤色。量もかなり多い。- 産後2〜3日目:
まだほとんどが血液で赤色。量は分娩直後と比べると、だいぶ減る。- 産後4〜5日目:
だんだん色が薄くなり、褐色(かっしょく)に変わる。量も少なくなる。- 産後1週目:
褐色から黄色がかった色になる。更に量も減る。- 産後10日〜3週目:
淡黄色のクリーム状になる。量もかなり少なくなる。- 産後4〜6週目:
白色のおりものに変わる。電子母子手帳 Babys!「悪露の異常」より
画像引用元:悪露の変化について
もし悪露が1ヶ月以降もずっと続く・悪露の量が増えている・悪露の臭いがきつい・(産後4〜5日目と同じ)褐色の悪露が続くなどが確認できた場合、子宮の異常やママの体の回復がうまくいっていない可能性があります。
すぐにかかりつけの産院か医師に相談しましょう。
4.子宮の回復を促す体操
産後は安静にすることが大事です。
ただ最近では産院の看護師さん、助産師さんが歩くようにアドバイスするように、ある程度の軽い運動は母体の回復を促すのに効果的であることがわかってきました。
まずは明治ホールディングスさんが提供する、産後ママのための次の動画をご覧ください。
出典:産後の体操|明治が提供する育児情報サイト『ほほえみクラブ』
※ お産を帝王切開で行った方は、必ず事前に医師や助産師に体操をしても問題ないか確認してください。
この動画は妊産婦の体操研究委員である湯澤 きよみ先生、湯澤 美樹先生のご指導の下、監修された退院後の産後体操です。
妊娠中にたるんだ筋肉を徐々に動かして、ずっと寝たきりだった状態を解消。
そして、母体の自然な回復を促してくれます。もちろん子宮収縮の回復を促す効果もあります。
メニューは次の7つの構成から成っています。
- 猫のポーズ
- 猫のしっぽふり
- 腰のカール
- すべり台のポーズ
- 腰のツイスト
- 腕まわし腹筋
ママさんの心と体が少ずつ外出したくなるくらい、回復してきたらちょっとずつでかまいません。
家事などの活動量を増やしていきましょう。