現在は少子化や核家族という社会環境が顕著に形作られて、同時にママと赤ちゃんが孤立化するという日本の悲しい実態が浮き彫りとなっています。
そんなママたちの悲痛の声から解決策として挙がったのが「産後ケア」です。
ここでは日本のママたちの現状と背景、そして産後ケアに名乗りを上げる心強い施設についてのお話をいたします。
産後ケアとは?
産後ケアとは、ママになった女性の心と体を癒やして、親と子の健全な関係構築をサポートし、結果的に“親としての自立”を促すことです。
特にママが赤ちゃんを産んだ後、ホルモンバランスの急激な変化によるママが精神的に不安定になる期間、または妊娠前の体に戻ろうと体が急激に変化する期間に行います。
「親のサポートが受けられない」「パパは仕事が遅いため、援助が期待できない」など、ママが一人で育児をせざるを得ない状況になると、産後うつという心の病に発展することがあります。最悪の場合、子供を虐待する行為に及ぶ危険性もあります。
さらに日本において産後、母子家庭の30%以上が2年以内に離婚している現状を厚生労働省が発表しました。
少しショッキングな情報ですが、それだけ産後の時期が重要であることがうかがえます。(さらに知りたい方は「産後離婚!母子家庭の35%超が産後2年以内に離婚してる悲惨な現状、その防止策」をお読みください)
この産後ケアのニーズが上がったのは、決して最近のママが悪いわけではありません。これにはそのような日本の現状と背景があったのです。
産後ケアの必要性をより深めるためにも、その現状についてお話ししましょう。
産後のママが昔より安静にできなくなった現状
ここ最近、産後の家事代行サービスを請け負う企業が増えています。なぜでしょうか?
これは、日本における“家族”の形態が変わっていった歴史的背景。また、戦後の社会環境の変化によるニーズの多様化がもたらしてものだと言われています。
ここでは、そのような状況を作り出した下記2つの理由について簡単に解説します。
- 若者が子供たちと触れる機会が減少した理由
- ママが一人で子育てする状況が増えた理由
どなたが読んでも理解できるように、分かりやすく書いてますのでご安心ください。
1.若者が子供たちと触れる機会が減少した理由
私たちの親世代(1950年代生まれとします)は兄弟姉妹が多く、また近所の子供とも触れ合うことがよくあったようです。さらに、年下の子の面倒を見ることもしばしば(私の両親の個人的感想です)。
しかし、ここ最近は“少子化”という社会問題が顕著に現れています。次のグラフをご覧ください。
グラフ1:出生数及び合計特殊出生率の年次推移-明治32〜平成25年-
出典:厚生労働省 平成26年 国民生活基礎調査の概況「I 世帯数と世帯人員数の状況」より
※スマートフォンの画面で見づらい場合、PCでご覧ください
これは厚生労働省が日本の出生数に関する数値をグラフでまとめたものです。
中でも特徴的なのが、平成25年(2013年)は、102万9816人と過去のどの年と見比べても一番低い出生数となっています。
以上のことから今の若いママ世代は昔よりも乳幼児や児童たちに接する機会が減り、何かあると「どう対処して良いのか分からない」といったママやパパが増えているという仮説です。
2.ママが一人で子育てする状況が増えた理由
「両親の実家が遠いので育児を頼るのが難しい」「里帰りしても両親は働いているので育児をお願いできない」など様々な理由で産後、ママが一人で赤ちゃんを育てる家族が増えています。
農業時代のように夫婦の両親や親族とまとめて一緒に暮す形態とは異なり、夫婦と未婚の子供、または夫婦のみから成る家族のことを「核家族」と呼びます。この核家族が増えていることが、日本における1つの現状です。
ちなみに、Yahoo!知恵袋で「何故(なぜ)核家族は増えてきてるんですか?」という質問に対して、回答者の mozzu7417 さんが実に明確にお答えしています。
- 生活の糧(かて)が変わった(収入を得る手段が変わった)
- 人のニーズが多様化した(便利で豊かな生活に合わせ個々人のブライバシーや自由度が向上した)
- 女性の社会進出(自立化が進行した)
Yahoo!知恵袋「何故核家族は増えてきてるんですか?」より
では実際のところ、どうなのでしょうか。次のグラフを見てみましょう。
グラフ2:世帯数と平均世帯人員の年次推移
出典:厚生労働省 平成25年 国民生活基礎調査の概要「I 世帯数と世帯人員数の状況」より
※スマートフォンの画面で見づらい場合、PCでご覧ください
この「平均世帯人員(一家族あたりの合計人数)」と呼ばれる折れ線グラフをご覧ください。昭和28年(1953年)の「5.0人」から下降をたどり、平成26年(2014年)には「2.49人」となっています。
この数値からも、日本では間違いなく核家族化が進行していることが分かります。
以上のことから産後ケアが必要である現状がご理解いただけたかと思います。
それでは次に、実績のある産後ケアサービスを提供する施設をご紹介しましょう。
産後ケアをサポートする施設
産後ケアを要望するママの声から実現した産後ケアサービス。ここでは実績のある施設を絞って紹介していきます。ご参考にしていただければと思います。
1.東京都世田谷区にある産後ケアセンター桜新町
東京・世田谷区で2008年、全国初の産後ケア専用施設として誕生しました。
24時間体制で、助産師・保育士さんが母乳ケア・入浴の仕方、ベビーマッサージや育児アイテムの使い方などをサポートしてくれます。そのため、退院後も実用的な内容のため、非常に助かっているママも多いようです。
ご利用いただいたお母さまからは、
「ここでの経験が現実的でとても役に立った」、「実家のようで心身ともに癒された」、「これなら何とかやっていけそう」、「自宅での赤ちゃんのお世話が楽しみ」
など、たくさんの言葉をいただいています。
産後ケアセンター桜新町「センター長挨拶」より
と語るのはセンター長であり、助産師の萩原 玲子(はぎわら れいこ)さんです。
実際にこの施設を利用された ふぁるさん の記事「産後ケアセンター 桜新町での生活。」が参考になります(愛にあふれた内容ですので、読んでるこちらもほのぼのとさせられます)。
2.全国に展開する日本産後ケア協会
産院と協力して全国に産後ケア施設を広める「日本産後ケア協会」では、看護師、助産師を中心に臨床心理士、産後ケアリストなどの専門職が24時間体制で産後ママのケアにあたります。
代表の大久保 ともみさんは、この協会を設立したきっかけを次のように語っています。
もう少し地域社会や制度としての協力やサポートがあれば、
当時の私も少しはこころに余裕も持って子育てを楽しむことができたように思います。
大久保さんは、育児によって精神的に追い込まれた自らの辛かった体験により、出産後のママの“産後ケアの必要性”を強く感じています。
また、この協会の特徴は「産後ケアリスト」という資格を持つ、産後ママのケアをするプロフェッショナルを育てていることです。
この資格があるからこそ、産後ケアのプロという基準が設けられ、ママも安心してサポートを受けられる訳ですね。
まとめ
過去にNHKの番組で「産後ケア」について取り上げられたことがあります。
しかし今年(2013年)、厚生労働省の研究機関を中心とするグループが全国の自治体を対象におこなったアンケート調査では、こうした(産後ケアをサポートする)施設があるのはわずか2%でした。
NHKニュース おはよう日本「どう支える“産後ケア”」より
核家族の母親が育児で悩み苦しむ現状がある中、国は財政難や人材不足で手が回らないという理由で産後ケア施設への注力は後回しになっているようです。
そんなママを助けるべく立ち上がった助産師さんや保育士さんには心底、感謝の気持ちが強くわき上がってきます。